こちらに来てから、一年くらいして、グリーンカードがまだ届かなかったので就労許可もないため、仕事をしないで家に居なければならなかった。
退屈だったので、地元のESLのクラスに入った。
ESLといっても地域やコミュニティ・カレッジによってけっこう違うようだ。
テストの結果で受講するクラスが決まるのだが、移民としてアメリカに入国した人が生活する上で必要な英語を身に着けさせるのが目的。
例をあげると。
・外出、買い物、外食で必要な英語
・健康に関することとして、病院への予約や医師や看護師との会話
・安全について 緊急時の911への電話のかけ方、強盗にあってしまった時の説明、救急車を呼んだ時の状況説明。
・お金に関すること クーポンの使用の仕方や、何かを購入した時の返却、払い戻し、保証書などについての電話の仕方。
・住まいに関すること 家の中の故障や修理、メンテナンスを依頼する時、賃貸している人は大家さんに失礼にならない言い方で問題を伝える方法など
・仕事に関すること 求人の見つけ方、求人への応募と電話での問い合わせ、
仕事中の同僚や上司とのやりとり、休みをとったり、シフトを交換してもらう時の会話
・選挙や投票に必要な会話
・イディオムでの繊細な感情の表現
・アメリカの行事、慣習
・歴史や地理
このように移住した人が生活に困らないように直ぐに使える必要な英語を習う。
しかし移民としてやってきた人たちも仕事を始めたり社会に出るようになると忙しくなり、ESLのクラスにだんだん参加できなくなってくる。
結局は基礎クラスからチョロっと先に進んで受講したけど後が続かない人が圧倒的に多いようだ。
私がいるクラスはブラジル人、フィリピン人、中国人、ウクライナ人、カザフスタン人、韓国人、中国人、日本人がいる。
どの移民もダントツで電話での会話が一番いやだと言う。
電話が苦手ならドライブスルーでの会話も同じ。
英語の早口に慣れていない移民は、親切な対応をしてくれるアメリカ人に当たればこちらの状況を察してくれるので何とかなるのだが、運悪くイライラしていて早口で喋ったり、たまに外国人にはわからないようなイディオムをわざと言ってくる人に当たると大変な目に合う。
でもそうやってヒヤヒヤしたり、ムカっときたり、気疲れしたり、会話成立で自信をつけたり、たまには嫌な相手にシテヤッたりと思ったりしながら、いろいろ経験を積んでいって、心臓に毛が生えたように図太くなる人もいる。
ハワイにいる同じ日本人でも、一世で夫や家族が日本から来た日本人だと「ここはアメリカでも、うちの中はぜ〜んぶ日本、会話も日本語だし、テレビも日本の番組、食事もほぼ日本食」と笑いながら言う人もいる。
そんな人をたまに羨ましくなる事もある。
夫がアメリカ人なので、とにかく英会話だけだし、夫が苦手だから、お茶碗もお椀も使わないし、お箸もたまにしか使わないから日本人の私が思うような完全な純日本食を食べたことはまだないし、(夫は日本の生活の詳細を知らないから、日本食を食べたつもり)、もちろんテレビもNetflixも英語。
始めは日本語の字幕のあるものを選んでいたけど、日本語の字幕のあるものは少ないので、英語音声で英語の字幕で見る時もあるし、めんどくさいとそれも無し。
それが今の私のいる環境。
移民といっても人それぞれ全く生活が異なる。
ESLのクラスで微笑ましくて笑ってしまうのは、英語が流暢ではなく、自国のアクセントが強い移民同士でも、クラスで誰かが英語の内容がわからないと助け合うこと。
先生もアクセントがあまり強いと何度も聞き返すことがある。
すると、できのいい生徒が先生に、たぶん彼/彼女はこんな事を言いたいんじゃないと伝えるのだ。
クラスの誰かがどこどこのレストランが良かったとかどこどこに新しい店ができたという情報を流すこともあるので、それを知ってそこに行ってみたりする。
同じクラスで18歳のフィリピン人女性がホームシックになって、それ以来クラスに来なくなってしまった。
毎日、泣いてばかりいるそうだ。
フィリピンの家族や同じくらいの年頃の友人に会えなくなり、こちらではまだ友人もいなくて寂しいそうだ。
寂しさやカルチャーショックを克服できないと多分、帰国してしまうかもしれない。
早く友人ができるといいね。